socialandstudy’s diary

様々な本の内容を紹介します。

誰が「自殺」するの?1

今回は、高橋祥友『自殺予防』岩波新書 2006から近年問題となっている自殺についてどのような人が自殺を選んでしまうのか、身近な人間はどう振る舞えばよいのかについて考えていきたいと思います。

自殺は「強制された死」である

自殺に関する言説には、

「全ての人間には生死の決定権がある。だから自殺することは、自己決定の結果であり止めるべきではない」

というような主張があります。

しかし、このような言説に高橋氏は、

「自殺を考える前の追い詰められてしまった人というのは、最後の瞬間まで、「死にたい」という気持ちと「生きたい」という気持ちの間を激しく揺れ動いている」(高橋、2006)と述べています。

また自殺の背後には、うつ病があることが多いことからも

「自殺は自由意志に基づいて選択された死などではけっしてなく、いわば「強制された死」である」(高橋、2006)と主張します。

これは、ある人間が、ある人間を間接的に死に追いこんだというわけではなく、社会の様相や個人の社会的背景が死に追い込んだということです。

(ある人間が、ある人間を間接的に死に追い込むことももちろんありますが全体としてみると非常に少数であると思われます。)

 

マスメディアの影響-群発自殺とネット心中

自殺が社会問題として報道されるようになったことでそれに対する人々の理解も進んでいきました。

それを報道するマスメディアが適切な情報発信をすることで自殺予防に寄与する一方で、報道によっては自殺を逆に促進してしまうということが起こりました。

それが、

群発自殺

②インターネット集団自殺

です。

群発自殺

これは、

 

・複数の人々が引き続いて自殺していく現象(連鎖自殺)

・複数の人々がほぼ同じ時期に同じ場所で自殺する現象(集団自殺

・特定の場所で自殺が多発する現象(自殺名所での自殺)

(高橋、2006 より)

 

などが挙げられます。

初期の自殺行動が誇張・美化されてセンセーショナルに報道されることによって、思春期の人々、心の健康に問題を抱えている人などの潜在的に自殺の危険が高い人にとって、他者の自殺がモデルとされ、病的な同一化を促進してしまいます。

 

インターネット集団自殺

インターネット集団自殺は複数の人々がインターネットを通じt知り合い、一緒に自殺するものでメディアにセンセーショナルに報道されることで話題になりました。

これも群発自殺と同様にじさつの危険の高い者同士がインターネットを通じてあつまることで負のエネルギーが一挙に高まってしまいます。

 

自殺の心理

自殺の危険をどう捉えるか

自殺の危険を捉える要素として自殺の危険因子というものがあります。

自殺の危険因子:自殺につながる危険のある因子

自殺の危険因子を多く持つものを見つけることによって自殺予防につながると高橋氏は指摘しています。

 

自殺予防の十箇条

上記の自殺の危険因子を踏まえたうえで、自殺予防の十箇条について確認しましょう。

下記の症状に早く気づき対照することで自殺予防につながります。

 

うつ病の症状に気を付けよう

これは言うまでもありません。自殺者の多くがうつ病を発症しているといいます。

 

②原因不明の身体の不調が長引く

うつ病の症状でもあります。うつ病は精神の症状だけでなく、身体の症状も生じるので注意が必要です。

 

③酒量が増す

中高年で徐々に酒量が増していく場合には、背後にうつ病が潜んでいることがあります。

 

④安全や健康が保てない

糖尿病の治療をやめてしまう、何の連絡もなしに失踪してしまう、全財産をかけるような株式投資に打って出るような安全や健康が保てなくなるといった形での行動の変化が現れると要注意です。

 

⑤仕事の負担が急に増える、大きな失敗をする、職を失う

「日本の年間法定労働時間は1800時間であるが、それが3000時間(月間250時間)を超えると、過労死や過労自殺の率が3~5倍も高まる」(高橋、2006)と言います。

また大きな失敗、職を失うことで自分の存在価値を見失うこともあります。

 

⑥職場や家庭でサポートが得られない

離婚した人、配偶者と死別した人のような孤立、孤独な人は、これらに歓喜のない職場、家庭関係が充実している人と比較して自殺率は3倍以上高いといいます。

ここから孤独、孤立は人体に悪影響であるということがわかりますね。

 

⑦本人にとって価値のあるものを失う

 

⑧重症の身体の病気にかかる

人生の意味、これからの生活などを大きく変えることになり自殺の危険が高くなります。

 

⑨自殺を口にする

⑨、次の⑩の段階まで行ってしまうと本人の判断能力が限られたものになっており正しい判断が出来ていない状態であるといえます。そのため、周囲に人間が働きかけて治療を進める必要があります。

「「死ぬ、死ぬ」と言って言う人は本当は死なないと広く信じられているが、これは大大きな誤解である。自殺者の大多数は、最後の行動を起こす前に自殺の意図を誰かに打ち明けている。」(高橋、2006)

 

⑩自殺未遂に及ぶ

いうまでもなく危険な状態です。

自殺未遂をして助かったとしても同じ行動を繰り返すことで自殺をしてしまうことがあります。

また自殺未遂をした人が自らん行為を他人事のように語ったり、他行的、軽躁的になることがあります。これは、自殺未遂がカタルシスの効果を与えているためです。

 

以降は次の記事にしたいと思います。

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