socialandstudy’s diary

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知的障害児に勉強をさせるには?

今回は、村中智彦『知的障碍児の指導における課題遂行の促進』2015 渓水社から知的障害児への働きかけの方法について考えていきたいと思います。

 

手続き

個別指導を行う上

での手続きにはいくつかの方法があります。

 

  1. 環境設定とスケジュールの構造化
  2. 断続志向
  3. フリーオペラント

の3つです。

 

1.環境設定とスケジュールの構造化

知的障害児には構造化された環境設定が必要とされます。

構造化では、児童に提示する内容やその方法を明確にすること、簡潔にすることが求められます。

 

個別指導においては、提示された課題以外の不要な刺激を配乗吸うことで、提示された課題のみに集中させる環境設定が有効です。

(特に自閉症児への有効性が顕著です。)

 

課題の提示などの指導者の働きかけの環境設定の構造化と不要な自劇を排除するという物理的環境の構造化が存在します。

 

2.断続試行

断続試行は、

手がかり→プロンプト→反応→結果

という流れで進められます。

 

手がかり:指導者が対象時に明確な指示、質問をする。

 ↓

プロンプト:手がかりとほぼ同時に指導者が対象時に正しい行動へのヒントなどの援助を行う。

 ↓

反応:対象児の反応

 ↓

結果:対象児が正しい反応(行動)をしたときにはほめる等の強化刺激を与え、正しくない反応をしたときには注意、代替行動を示します。

 

しかし、断続試行の課題として

 

・対象児の反応の維持が難しいこと

・対象児の自発性の喚起が難しい点

などが挙げられます。

ですが、宿題などの指導者が行わせたい行動を促す際にはこの方法が有効です。

 

また新しい課題、難しい課題に取り組む際、空白の時間には対象児の嫌悪性の高まりや、回避、逃避といった逸脱行動が生じやすくなります。

そのため、空白時を作らずに、対象児に働きかけることが重要です。

 

3.フリーオペラント

フリーオペラントは構造化された環境設定や指導者が提示した課題を遂行させるのではなく、対象児の自発的な行動に正しい反応へのアドバイスをやほめるなどの強化刺激を与えるものです。

つまり、対象児の行動をもとに、それを正しい方向に向ける、伸ばすための

手助けをするものです。

 

対象児の自発性をもとに指導する点で対象児の自由度が高いといえますが、その分、指導者が、対象児の自発的な行動を待たなくてはならないため、根気が必要であるといえます。

 

先行操作とその関連概念

次に、先行操作とその関連概念について説明していきたいと思います。

 

先行操作

対象児の逸脱行動を未然に防ぐために、状況事象、弁別刺激、確立操作を適切に設定することです。

 

先行操作によって、

「望ましくない行動の反応努力を減らすことで望ましい行動が起きる確率は高くなり、のぞましくない行動が起きる確率は低くなる」(村中、2015)

と言います。

具体的には、漫画やゲームに囲まれている、すぐにいつでもさぼれるような部屋で勉強させるのではなく、勉強道具以外何もないような部屋で勉強したほうが、さぼらなくなるということです。

つまり、先行操作とは、さぼりにつながるような要素を先に取り除くことです。

 

次に、状況事象、弁別刺激、確立操作について説明していきたいと思います。

 

状況事象

個人の行動を促進したり、抑制する社会的、環境的な事象です。

次に説明する弁別刺激を比較して複雑なものであり、行動と事象の間に時間的な距離があります。

 

具体例としては、

・生理的なもの(尿意、食欲等)

・認知情動的なもの(ある事象についてどう認識、感じているか)

・物理的環境(家具の配置、学校での座席等)

・人間関係

があります。

 

弁別刺激

弁別刺激とは、ある刺激が特定の行動を促進する、抑制する刺激です。

具体例としては、

「雨が降っているから家から出ない」

といったことが挙げられます。

これは雨が降っているという事象(弁別刺激)によって外出という行動が抑制されています。

 

確立操作

確立操作は「ある刺激の強化力を変える環境事象や生理状態である」(村中、2015)。

具体例としては、

一日徹夜することは睡眠の強化力を高め、睡眠に対する執着を強めることになります。ここで眠らせないことが確立操作です。

ダメというとやりたくなることに似ていますね。

確立操作には特定の刺激の増強機能があり、それによりもたらされる結果にも影響を与えます。

また、一度強化された行動の生起確率を一時的に高める機能があるため、先ほどの具体例で考えると、一日徹夜をしたことが、以前にもあった場合、眠らせ合いという行動が眠りへの執着を高めることになります。

 

上記3つからなる先行操作でいえることは、

逸脱行動につながる事象、刺激を事前に取り除くことが重要であるということです。

 

まとめ

知的障害児への働きかけとしては、余計なものを排除すること、働きかけの連続性が必要であるということがわかりました。

やはり、対象児に他にやることがあるというように思わせないように指導者が工夫することが必要だと思います。

興味がある方は是非読んでみてください。

 

 

参考:村中智彦『知的障碍児の指導における課題遂行の促進』2015 渓水社