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シングルマザーの貧困の実態とは? 1

今回は、水無田気流『シングルマザーの貧困』2014 光文社新書を参考にシングルマザーの貧困の実態について解説していきたいと思います。すべての章について言及することは出来ないので、一部の章の内容について述べようと思います。

 

 

第1章 シングルマザーの貧困問題

生活水準

シングルマザーの生活水準は、「国民生活基礎調査」(2013)によると、18歳未満の子どものいる一般世帯の平均年収が673万円であるのに対して、母子世帯の平均年収は243万円だといいます。

つまり、「保持世帯は平均して一般世帯の36%程度の年収」(水無田、2014)しかありません。

子どもの有・無

水無田氏は、「女性の就業率が上昇し、正社員に関しては男性の7割程度まで稼ぐようになった女性だが、実は「子どもの有・無」という指標でみると大きな格差が指摘される。」(水無田、2014)と述べています。

その格差とは、日本の子ども有りの女性労働者は、子ども有りの男性労働者の4割ほどの賃金しか得られていないということです。

この格差は、OECD諸国内で最大の男女格差となっています。

OECD 加盟国とは、外務省によると、

目的

 OECD設立条約は、以下の3つをOECDの目的としています。(第一条)

(1経済成長)

 加盟国の財政金融上の安定を維持しつつ、できる限り高度の経済と雇用、生活水準の向上の達成を図り、もって世界経済の発展に貢献すること。

(2)経済成長

 経済発展の途上にある地域の健全な経済成長に貢献すること。

(3)貿易:

 多角的・無差別な世界貿易の拡大に寄与すること。

参考:OECD(経済協力開発機構)の概要|外務省 (mofa.go.jp)

つまり、先進国と呼ばれるような国々の中で、労働面においてトップクラスの男女格差を有しているということです。

シングルマザーの貧困は「父の後盾がなくなって前面に出てきた問題である。」(水無田、2014)、すなわち、母は一人で経済的な役割、母親業といわれるものを担わなければならないということです。

ここで水無田が警鐘を鳴らすのが、「シングルマザーが従来の家族規範を逸脱した時に浴びせられるはげしい非難の声」(水無田、2014)があるということです。

これは母親がするべきであるというジェンダーバイアスが存在する母性愛、子育てを自分自身で行うというレールから外れた「異端者への排撃」(水無田、2014)ではないかということです。

 

第3章 近代家族の矛盾

協議離婚と調停離婚

まずは、離婚の形態について説明します。

協議離婚:夫婦間の話し合いで成立する離婚

調停離婚:家庭裁判所の介入のもと、離婚の争点となっている物を調停して行われる離婚(親権などが争点となります)

この2つの離婚の形が存在します。

 

「養育費」の実情

2012年の「全国の母子世帯等調査」によると母子世帯の養育の受給状況(年度別)は、

0~2年→26.8%

2~4→31.1%

4年~→15.6%

となっています。

ここから分かることとして、2~4年で養育費の受給率は増えていますが、母子世帯の貧困を踏まえると「かなり水準と言わざるとを得ない数値」(水無田、2014)と言います。

また養育費の取り決めをしていない場合も多数存在します。

それはなぜでしょうか?

 

母子世帯で養育費の取り決めをしていない理由

1、「相手に支払う意思や能力がないと思った」47%

2、「相手とかかわりたくない」23.7%

3、「取り決めの交渉をしたが、まとまらなかった」9.5%

4、「取り決めの交渉が煩わしい」3.4%

5、「相手に養育費を請求できるとは思わなかった」3.1%

 

というようになっています。

 

父子世帯で養育費の取り決めをしていない理由

1、「相手に支払う意思や能力がないと思った」34.8%

2、「自分の収入で経済的に問題ない」21.5%

3、「相手とかかわりたくない」17.0%

4、「子供を引き取った方が養育費を負担するものだと思っていた」8.5%

5、「相手に養育費を請求できるとは思わなかった」4.8%

 

というようになっています。

このような結果から水無田氏は次に様に指摘します。

 

母子世帯で「自分の収入で経済的に問題ない」がたった2.1%であるにもかかわらず、実際に養育費の取り決めの話し合いを行おうとする母が少ない点である。低学歴、低所得層ほど、離婚調停や養育費取り決めなどについての知識が乏しく、また知っていたにしても、相手に請求できる所得が無いと最初からあきらめている姿が示唆される。

(水無田、2014)

 

養育費支払いに対する解決

このような養育費問題を解決するためにはどうすればいいのでしょうか。

水無田氏は2つの解決策を述べています。

①家族解決型

この解決型の内容は、「養育費問題はあくまで家庭内の問題であるので、司法の助けを借りて家族が解決するべき、という考え方」(水無田、2014)であり、「家族のプライバシーを重視し、自助を重んじる立場」(同前)を取っています。

しかし、この解決型の問題点は、養育費支払いに強制力を持たせることが出来ず、あくまで話し合いや家庭裁判所の調停によって解決せざるを得ないという点です。

 

福祉国家解決型

この解決型は、福祉給付(児童福祉手当等)によって、「子どもの浮揚に関して公的扶養を優先するもの」(水無田、2014)であると述べられています。

しかし、この解決型にも問題点は存在し、それは福祉財源の確保をどのように行うかです。

現在の日本がどちらの解決型を想定しているかは、これまでの内容を踏まえると①家族解決型であるということが見えてきます。

 

つづきは次へ回します。

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参考:水無田気流『シングルマザーの貧困』2014 光文社新書

   OECD(経済協力開発機構)の概要|外務省 (mofa.go.jp)