嫌われる勇気とは?-アドラー心理学について考える- トラウマを否定せよ
続いては嫌われる勇気の内容について説明していきます。
前回の記事はこちら
3.嫌われる勇気の内容-第1章トラウマを否定せよ-
3.1 トラウマは存在しない
まず始めに、アドラー心理学を理解するには、原因論ではなく、目的論で考える必要があります。
原因論とは、現在の状況を過去に原因があると考えるものであり、目的論は、現在の状況は未来の目的のために自身で作り出したものであると考えます。
具体的には、「A君が家に引きこもっている」と状況を、社会に対して恐怖を感じたから引きこもっていると考えるのが、原因論の考え方であり、外に出ないという目的があるという考え方が目的論です。
トラウマについての話に戻りますが、アドラー心理学は、トラウマを否定しています。アドラーは、
「いかなる経験も、それ自体では成功の原因でも失敗の原因でもない。……(トラウマとは)自分の経験によって決定されるのではなく、経験に与える意味によって自らを決定する」※()は筆者の補足
と述べています。つまり、トラウマとは、私たちが持つ経験に、私たち自身がどのような意味を与えるのかによって左右されるということです。ここで前述の目的論が重要となってきます。原因論にとらわれているままでは、トラウマは存在し続けます。未来の目的のために現在が存在していると考えることが出来ると、過去の経験は過去でしかなくなります。
3.2 あなたの不幸はあなた自身で選んだもの
今あなたは、幸福ですか。それとも不幸であると感じていますか?
不幸であると感じている人へ。
「いまのあなたが不幸なのは自らの手で「不幸であること」を選んだから」だと本書では述べられています。
どういうことでしょうか?
これも目的論の考え方を利用します。
「不幸であるという状況」は、何かしらの過去が原因となって、与えられたものではなく、幸福になりたくないため、自ら選んだものなのです。不幸でい続ければ、多くの人から「かわいそうに」といったように同情してくれるかもしれません。またかわいそうだから、優しくしてくれるかもしれません。そのため、自ら不幸であることを選択したのです。
例えば、過去に「貧困を経験した」、「親が離婚を経験した」から不幸なのであると考える人もいるかもしれません。しかし、その経験を不幸と考えるかそう考えないかは、自分自身です。「貧困を経験した。だから、いまは仕事を頑張って、家族を楽させたい。」と考えたり、「親が離婚を経験した。だから、自分は家族を大切にしたい」と考えることは出来ます。私たちが、過去にどのような意味を与えるかによって不幸は不幸ではなくなります。
3.3 あなたの人生は「いま、ここ」で決まる
私たちの人生はどのように規定されるのでしょうか?
私たちは常に「Yさんみたいになれればなぁ」というように、他人をうらやんでしまいます。
しかし、
「「もし何々だったら」可能性の中に生きているうちは、変わることなどできません。なぜならあなたは変わらない自分への言い訳として「もしもYのような人間になれたら」と言っているのです。」
私たちは、可能性の住人になるのではなく、「いま、ここ」を生きるべきなのです。
私たちのこれまでの人生や誰かのあこがれは「今後の人生をどう生きるかについて何の影響もない」のです。
3.4 まとめ
『嫌われる勇気』の第1章について、考えてきましたが、この章で述べられていることは、「目的論で考えること」、「経験にどのような意味を与えるかは自分次第である」ということです。
次回は第2章について考えていきたいと思います。
引用文献:岸見一郎、古賀史健『嫌われる勇気』ダイヤモンド社 2013